リカちゃん人形と救急車の関係

 このネタは「西村知美の奇言」として語られることが多いようですが、 それは誤解です。そして、意外と知られていないのが、 これが「ナイトスクープのネタ」であるということです。

西村知美は広めただけ

 西村知美がテレビ番組での発言によって、 このネタを全国的に有名なものにしたことは事実です。 しかし、それは「伝聞形」での発言でした。

 私自身も、問題の番組をリアルタイムで見ています。 日時等の細かい情報に関する記憶は定かではありませんが、各種情報によれば

1997年1月15日に放送された「ボキャブラ天国」のスペシャル版
であったようです。そして、発言趣旨は 当時のNetNewsでの記事の表現(発言内容を正確に再現したものではなく、 記事の筆者の表現で発言趣旨を説明したもの)を借りれば、
In article <SHIMURA.97Jan29215657@h5.logic.info.waseda.ac.jp> shimura@logic.info.waseda.ac.jp writes:
>「○○を食べると××の味がする」
>という話題がはやったときに
>「リカちゃん人形の足を噛むと、救急車の味がする」
>というものを聞いたことがあるけれども
>それがどういう意味なのか今でも理解できない。
>説明できる人がいたら教えていただけませんか。
というものでした。 つまり、西村知美自身も「ついて行けない」話だったのです。

 このときの西村知美の具体的な発言内容については、 「とろりん語録」と称するページに収録されているものが、 ページの趣旨から考えれば、おそらく実際に近いものであると思われます。 しかし「伝聞形の発言」であることが読み取りにくいという意味では、 あまり適切な記録とは言えません。この記録でも発言の最後に

「わたしいまだに理解できないんですよ」
とあることでも判るように、その直前の「これほんとにあるんですよ」というのは
「救急車の味がする」という事実ではなく
「救急車の味がするという話が存在する」という事実
なのです。決して西村知美自身の味覚ではありません。

 ところが、彼女のあのキャラクタゆえに 「それくらいの素頓狂なことは言い出しかねない」 「そういう変てこな感覚を持っていても不思議ではない」 と思われたのでしょう、 いつのまにか彼女を主体とする話に変わってしまったようです。

西村知美レベルでの誤伝聞

 実は、西村知美発言の段階で、既にネタが歪曲されています。 具体的には、

「足」「噛むorかじる」
という2つのキーワードが嘘です。 つまり、「足」という具体的な場所に対して 「噛む」という具体的な行動を取った結果感じる 「実感覚」的な味ではありません。 「リカちゃん人形からイメージされる味」と 「救急車からイメージされる味」とが一致するという、 全くのイメージの世界の話です。

 元ネタでは「リカちゃん人形を噛む」わけではなかったという意味では、 「とろりん語録」の作者のページに引用されている 『TV Bros.』1997年3月8日号の投稿内容も不正確です。

元のネタはどんなものか?

 冒頭でも述べたように、このネタは元々 「探偵!ナイトスクープ」で取扱われたものです。 放映日はキー局の朝日放送(大阪)で1992年7月3日、 他局では遅れて放送されている場合があります。

 元々の依頼内容は、 依頼者が「ネギを噛むとリカちゃん人形の味がする」 と友人に言ったら馬鹿にされて悔しかったので、 自分一人だけの変な感覚なのかどうか調べて欲しいというものです。 じゃあ、その人はリカちゃん人形を食べたことがあるのかというと、 そういうわけではなくて、上述したようにイメージ的な「味」なわけです。

 とりあえず、探偵(桂小枝)が街でインタビューしてみたところ、 同じ感覚の持ち主(大概、友人に馬鹿にされた経験を有する)が 数人集まってしまいました。

 集ったメンバーは各々に「リカちゃん人形とネギ」以外の組合わせも 色々と主張し、それに対して他のメンバーが、 「あ、その感覚、わかる」という反応を示して大いに盛り上がりました。 その中で出てきたのが、「リカちゃん人形は救急車の味もする」というものです。 この部分のみが抽出されて、西村知美に伝わったわけですね。

 この後、探偵がメンバーを伴って匂いを研究している研究者を訪ね、 リカちゃん人形とネギをクロマトグラフィで分析してもらいます。 で、素人目には同じようなパターンが出るのですが、 研究者に言わすと全く別モノで、さらに喰い下がる探偵に キレた研究者がリカちゃん人形を床に叩きつけて怒りだし、 探偵以下思わず後ずさり……という場面でオチにしていました。

清水圭の行動について

 西村知美が問題の発言をした時に、スタジオに清水圭が居た記憶があります。 彼は「探偵!ナイトスクープ」の探偵経験者であり、 当然のこととして元ネタを知っていたハズなのですが、 何も発言しませんでしたね。 確かに、あの場は「西村知美の素頓狂な発言」として進めてしまう方が 番組の流れとして面白かったでしょうし、 そういう判断で、敢えて黙っていたのかもしれません。



2000年10月30日WWW公開用初稿/2006年10月29日最終改訂/2012年7月17日ホスト移転

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